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NPO法人囲碁教育振興会総会における薛剣総領事の挨拶(全文)
2022-05-20 20:40

皆さん、こんにちは!

中国駐大阪総領事薛剣と申します。どうぞよろしくお願い致します。

去年6月に着任して、もうそろそろ1年が経ちます。先ほど坂前代表から今日は私がこの場に来るのはありえないというお話がありましたが、正直どうしても来なければならない理由があります。一つは、囲碁は中国と日本の間で非常に深いご縁で結ばれている大きな存在であるからです。ましてや今年は中日国交正常化50周年という大きな節目で、それ以前から囲碁の交流が盛んに行われていました。これによって国交正常化が実現できた部分も大きかったと思います。さらには国交正常化以降、沢山の交流がありました。ぜひこの場で皆さんに感謝したいので、この場に来なければこんなにたくさんの囲碁で中国と交流なさっている方に申し訳ないと思うからです。さらには今日生駒市、東大阪市の市長さんもお見えですが、実は特別なご縁があります。生駒市は私の出身地の中国江蘇省淮安市と交流関係を持っておられます。こちらに来る前に今日のことを向こうの市長さんに言ったら、「ぜひよろしくお伝えください。コロナが終わったらすぐに交流・協力を回復したいです」と言われてきました。東大阪市には残留孤児の皆さんがたくさんおられます。私個人としても誇りに思っておりますが、日本関係の仕事をやっているなかで、長い間残留孤児の皆さんと結構緊密な関係をもっています。着任してから彼等ともいろいろ交流を行っています。さらには両市の間に挟まれる生駒山に山登りとまではいかないが、山の散歩を何回かしてきました。本当に素晴らしい町です。これからも囲碁だけでなく、さらに多くの交流を中日間でなされることを強く期待したいと思います。

今日はお招きいただきまして、誠に感謝しております。まさに歴史的な総会であって、前代表の坂先生は大変苦労をなさって大きく貢献してこられました。大塚新代表にはこれからもっともっと大きな発展を期待しております。心からおめでとうございます。

私個人としては実は囲碁はまったくの素人です。大学時代五目並べしかしていませんでしたし、小学校4年生の娘とたまにやっていますが、負けたりもしています。そんなぐらいど素人です。しかしそうは言っても、囲碁についてはその歴史、中国と日本との間の交流についてはずいぶんいろんな知識と理解をもっております。囲碁のはじまりは、約四千年前の中国からだといわれます。奈良時代に吉備真備が遣唐使として中国から日本に持ち帰ったという話です。今でも奈良の正倉院には、聖武天皇の遺品として碁盤3面、碁石2組が保存されていると聞いております。2000年以上にわたる中日両国の文化交流の中で、囲碁という存在は非常に大きなものであったと思います。

今日のテーマは中日国交正常化50周年ですが、その実現のために囲碁の貢献も大きかったと言われます。そのきっかけは1959年10月、当時の自民党顧問の松村謙三先生が中国を訪問したときに、中国の陳毅国務院副総理と会談した時です。二人とも囲碁の大ファンなので、ぜひ両国で囲碁交流をやろうと約束を交わしたそうです。二人の努力のおかげで、翌年の1960年に日本棋院の代表団が中国を初訪問し、1962年に中国棋院の代表団が日本を答礼訪問しました。さらには、1964年に29人の日本の有名な棋士が800万人の囲碁愛好者に対し、中日国交正常化の署名活動に参加するよう呼びかけたそうです。国交正常化に至らなかった頃から、両国の囲碁愛好者が中日友好のために奔走し、大きな貢献をされました。これを50年後の私たちはしっかり銘記して、この交流を一層盛り上げていかねばならないと思います。

国交正常化した後、両国囲碁界の交流はさらに盛んになりました。中国と日本のスーパー囲碁が1984年に始まり、両国のトップクラスの棋士の皆さんは両国の間でスターのような存在となっていました。私は当時高校時代だったのですが、今でも彼らの名前が頭に焼き付いています。例えば日本の小林光一先生、大竹英雄先生、中国では聶衛平、芮廼偉など非常に有名な棋士がいて、対局するたびに両国の間で大きなニュースとして取り上げられました。さらに双方は一緒に映画も創りました。『未完の対局』という映画でしたが、聞いたところで実話に基づいた映画ということです。戦時中は中日の友人二人にある囲碁の交流が途絶えてしまって、戦後も長く断絶の状況が続きましたが、国交正常化で両国の囲碁の交流が回復したので、未完の対局を続けようというストーリーだったのです。出演したのは当時両国のトップクラスの俳優ばっかりで、高校生だった私が、あの映画を見て本当に感動していました。90年代になってからは中国と日本の二国間の囲碁の交流には韓国も加わり、三国間の交流となっているようですが、囲碁の国際交流がどんどん広がってきているのは本当に喜ばしいことであります。

中国の春秋時代の聖人孔子さまが初めて囲碁に触れたときに、「飽食終日,無所用心,難矣哉!不有博弈者乎,為之,猶賢乎已!」(一日中何もしないよりは六博や碁でもやっていた方がましだ)」と感想を言い、囲碁を始めてすぐに虜になったそうです。皆様は囲碁に対する情熱が深いだけでなく、それをもって両国の文化教育交流、さらには相互理解へとつなげていく様々な活躍をなされてきました。この場を借りて、皆様に心から敬意を表したいと思います。

ここでさらに申し上げたいのは、囲碁は常に大勢を念頭に入れておかないと必ず失敗するということです。これは私たち外交官の仕事と相通じることで、現在の国際情勢は本当に激動の時代が始まっております。この激動の時代に身を置かれている今だからこそ、大勢を見誤ってはなりません。方向性を間違ったらいくら頑張ってもうまくいかない、むしろ頑張れば頑張るほど悪い結果になってしまいます。中国と日本は隣国同士で、しかも二千年以上の交流の歴史をもつ特別な隣国同士であるから、こういう認識を共有していかねばなりません。常に大勢を捉えてやっているのかと意識しながら個々の仕事をこなしていかねばなりません。今は激動の時代の幕開けの時期ですから、囲碁と同じように、最初の所は一番重要だと、最初の一歩を踏み間違えないように、ぜひ互いに心に銘記して欲しいと思います。

最後になりますが、中日国交正常化50周年の年に今日このような盛会が開催されたことを、心からお祝いとお喜びを申し上げ、また皆様のご健勝とご活躍をお祈りして、あいさつにかえさせていただきます。誠におめでとうございます。

 
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