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「私の好きな中国映画」作文コンクール記念賞佳作抜粋(三)
2022-09-28 20:03

毎年、五十本以上映画を観ている。DVDは好きではない。映画館の大きなスクリーンで、大音響の中、その世界に浸る時間は何物にも代えがたい豊かな時間だ。

ただ、日本の地方都市に住んでいるので、都会に比べれば中国映画を見られるチャンスは限られていて残念なのだが、その分選りすぐられた作品に出会えるともいえる。実際、我が家から徒歩圏内にある単館系の映画館では、良い作品と出会えることが多い。

中国映画と言えば、まずスケールの大きい歴史ものが思い浮かぶ。中国映画の金字塔『ラスト・エンペラー』。この映画からは日中戦争と満州帝国の光と闇を思い知らされた。坂本龍一の音楽は壮大な世界観を表していて、イントロを聞いただけで広大な紫禁城が目に浮かぶ。初めて北京へ行った時の最大の期待は故宮であった。毛沢東主席の大きな写真の掲げられた天安門をくぐり、紫禁城に入った時の感激は忘れられない。ラストエンペラー、愛新覚羅溥儀が自転車で走り回ったのはここなのか。一つ門をくぐったかと思うとまた宮殿があり、どこまで行っても終わりがない。でもいくら広大でも高い塀に囲われた、ここだけが彼の世界だったという史実。

頤和園へも足を運んだ。西太后の暮らしたという、これまた想像を絶する広大な庭園。どうすれば一日で巡れると言うのか。

映画ではないが、日中合作のテレビドラマ『蒼穹の昴』(浅田次郎原作)は実際にこの頤和園でもロケされたという。清朝の王宮の生活をリアルに再現した映像の細やかさ、美しさにはただただ圧倒された。阿片がもたらした清朝の滅亡のドラマだった。

映画からはいくらでも歴史を学ぶことができる。多少のフィクションを混じえるとはいえ骨格を歪めることはできない。あとは、自分で学び、考えることだ。そう、映画は知識の玉手箱だから。

その後大連へ旅した時、ここが満州帝国の中心であったことをこの目で確かめることとなった。大連の中心の円形広場の周りの石造りの建物は、当時のままの姿をとどめていたからだ。それぞれの建物に、ここは元○○銀行とか○○生命保険の本社であったとかの銘板が設置されていた。夜には美々しくライトアップされ、かつての美麗さを想像するに難くなかった。満鉄の資料館へも行ったが予約していないからと入らせてもらえなかったのは残念だったが。

ーー堀本万里子 『中国映画は歴史の教室』


日中合作映画「再会の奈良」を視聴して感じたことは、「日中国交正常化50年という期間を経てもなお、両国民の間には大きな隔たりが存在しているのではないか」ということである。

映画冒頭の飲食店のシーンにおいて、吉澤一雄(國村隼)が清水初美(Ze Ying)に対して「言葉があれやなあ」と声をかけた場面に関しては、日本人が外国人に最初に抱く感情が込められているのではないかと感じた。これに対し、初美が、「私は日本人です」と言い放ったのも、日本人の態度に対してうんざりしている部分があるのではないかと勘ぐってしまう。私は、日本人の大半が、在日外国人に対して嫌悪を抱いているとは思っていない(信じたくない)。しかし、どこか在日外国人を同じ国民であるとはみなしていない部分はあるのではないかと思う。日本人と在日中国人をはじめとする在日外国人との間に壁が存在していることをあんに表現していると感じた。

(中略)このように、この映画は、日本と中国の暖かい交流の様子を描く一方で、中国残留孤児の問題や外国人に対する差別問題など、日本の闇の部分が随所に入れられている(はっきりとその部分について言及があるわけではないのが良かった)。また、この映画の内容については、少々理解が難しいところもあったが、良い意味でいろんな解釈ができ、深く考えさせられる映画だと感じた。私は今、仕事の関係で中国語を勉強しており、映画の中で生の中国語での会話を聞けたことも良い経験だったと思う。今後、日中合作映画だけでなく、中国の映画も見ていきたいです。

ーー井上真一『日中合作映画「再会の奈良」を視聴して』


1 点目は、偏見が引き起こした摩擦である。特に、陳おばあさんが話した「また会おう」というロシア語の「BAKA」をバカと罵られたと勘違いして恋人の家族から嫌われているシーン、「なぜ結婚相手が中国人なんだ」と親から責め立てられているシーンは印象的であり、小さな思い込みや偏見が修復不可能な程の大きな問題を引き起こす典型的な例である。

メディアを通して世界の情報に接している我々は、往々に中立的な視点を失いがちであり、それらは意識せずとも我々の価値判断に影響を及ぼしている。最近は連日のようにロシアとウクライナの衝突についてトップニュースとして報じられているが、ロシアに侵略されて悲惨な状況に追い込まれた人々の声ばかりに焦点が当てられている。当然、それぞれの報道はフィクションではないが、一部の出来事が切り取られて過度に誇張されることで、我々は事の本質を見失ってしまう。中国に対する報道も同じであり、残念ながらネガティブなバイアスが強い報道に偏っている。特にここ数年、コロナ禍の影響で日中の往来が制限され、気軽に訪問することが難しくなったため、「メディアが報じるのは一部だけでホントの中国はこうなんだ」という声もなかなか挙がらない。在日中国人の数は多いが、その多くはコロナ禍の前から長く住んでいて「動態的ないまの中国」を知らない人も多い。

2 点目は、残留孤児のように歴史に翻弄されて苦しむ人々に対する支援の大切さである。映画でも最後はなんとか巡り合えることを期待していたが、残念ながら尋ねた養女はすでに亡くなってしまっていた。戦後 80 年近く経つ現在、残留孤児に関わる当事者は高齢化が進んでおり、一刻も早い解決が望まれるからである。政府は歴史に向き合い、過去の悲劇と過ちを肝に銘じ、残留孤児の様に悲惨な運命を背負わされた人々に対して最大限の支援をしなければならないにも関わらず、世界が不安定化している時機を捉えて更なる脅威を煽り、対立を深める空気を醸成することで、防衛費を拡大しようとしている。これらの風潮に対して、私たちは正しい知見を持ち、社会の雰囲気を変えていけなければならないだろう。

私たちが、ホントの姿を発信し、友人や同僚に話し伝え、広がっていく。大それた社会運動と呼べるものではないかもしれないが、草の根レベルの積み重ねが、大きな力になり社会を変えていくのだと私は信じている。私個人としては、旅行に行けない代わりにオンラインで様々な場所を調べ、イベントに参加することで、コロナ禍が収束した後に実際に訪れる場所への期待が高まっている。また、奇しくも土地の地理や歴史について学ぶ時間が取れたので、以前よりも深い旅ができると期待している。ぜひ中国の中でもホットな新疆をはじめ、東北地方、台湾、香港等、各地を訪れることで「いまの中国」をより深く理解したい。

ーー川﨑裕紀『私の好きな中国映画:「再会の奈良』


 
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