トップページ > トピックス > 「私の好きな中国映画」作文コンクール
「私の好きな中国映画」作文コンクール記念賞佳作抜粋(四)
2022-09-29 22:48

言語を習っているものとして、中国人らしい日本語を聞くと、ワクワクすることがある。自分がいる国に「外から来た人」がいることにワクワクし、「異文化」の混在にシンプルに好奇心が湧く。しかし、その裏側に複雑に抱え込んでいる家庭環境が存在していたらどう接したらいいのか。しかもそれが日本の歴史と密接に関わっているとき、どうすればいいのか。吉澤は、飽くまで個人の助けになることに向き合って関わろうとし、過去には多く踏み込まなかった。私はその姿勢に感動を覚えた。吉澤は中国語も話せない上、両国の歴史について知識が沢山あるわけでもない。そのとき私たち市民にとって一番大事なのは、どれだけ言葉やその国の歴史を知っているかよりも、どれだけ相手本人に関わろうとするかである。

相手に関わるための一番大切なエネルギーはなにか。それは少しの勇気である。そしてもっと相手に寄り添うための手段として、言葉や表情がある。相手が何かを打ち明けてくれた時、それが自分の手に負えるものなのか、そうでないものなのかに関わらず、目を見て、耳を傾けることが大事だと気づかされた。その姿勢こそが相互理解の原動力になり、国境を越えた友好の手がかりになるだろう。私は残留孤児の映画を通して、一日本人として、吉澤の働きかけに注目し、相手本人を知ろうとする勇気の大切さを身に染みて感じた。

私は大学で中国人の友達と共に時間を過ごし、まだ拙いものの言葉が通じる喜びの一片を味わったことがある。そして言語の違いや文化の違いを肌で感じたことがある。それは紛れもなくかけがえのない思い出である。それからこの映画を見て、いくら言語を操れて歩み寄れても、踏み出せない線がありそうだということを知った。だからこれからは、少しの勇気が必要である。国を越える勇気、ただ相手の目を見て、興味を持って耳を傾ける勇気。そんな勇気を一層大切にしていきたい。

ーー延安 美穂『「私の好きな中国映画」ポンフェイ監督:「再会の奈良」』


私は学生時代に中国へ一度行きました。しかし、その時は上海近辺だけの短い旅だったため、戦争のことは感じないまま楽しんでいました。それから、30年以上が経ちました。

「再会の奈良」、この映画は、地理的に近い関係にありながらも、歴史的には難しい感情を抱いている日中両国の国民に、優しく語りかけるような映画だったと思います。

映画の冒頭、アニメーションではありますが、中国東北部を舞台に、日本と中国の悲しい歴史についての説明があり、この時代がもたらした悲惨な状況を見ることができました。中国残留孤児が生まれた経緯や戦争について知ることができるという点においても、この映画を見る価値があると感じました。

(中略)私が訪中した頃の中国、残留孤児が日本に帰国し始めたころの中国、そして今の中国はそれぞれ変わっていると思います。また、これからも変わっていくと思います。

今回の映画鑑賞をきっかけに、今後も中国に関心を持っていきたいと思います。

ーー石丸 美貴『「再会の奈良」感想文』


家庭問題の紛争を円満に取りまとめる仕事をしてきた私は、どうすれば「尊老愛幼」「百善孝為先」という中国の成語を解りやすく話せるかといつも悩みました。

1983年に中国全国優秀短編小説賞を受賞した彭見明著『那山 那人 那狗』を原作にした1999年に霍建起監督が制作した映画『山の郵便配達』は金鶏賞を受賞し、2002年に日本アカデミー賞と毎日映画コンクール外国映画ベストワン賞を受賞しました。

私は、東京の岩波ホールへ観にいきました。なるほど「尊老愛幼」「百善孝為先」を堂々と表現した傑作だと感動しました。

(中略)責任もって仕事をする重要さは、いうまでもありません。ただ仕事の中には、家族との絆も、社会との絆も、教育も、癒しも、モラルもあります。これは、人間のあり方の原型です。

人の命はたかが数十年です。家族の誕生と成長と老いと死別は、避けられません。山河に悠久な美しさがあるように、人の命と心にも悠久の美しさがあります。昨日から今日。今日から明日。時間は連なります。未来に希望を抱いて勇気をもって進む心には、愛とモラルを慈しむ悠久な文化があります。

映画『山の郵便配達』は「尊老愛幼」「百善孝為先」の文化があることを丁寧に教えてくれる素晴らしい映画です。

ーー関 登美子『私の好きな中国映画「山の郵便配達」』

 
Suggest To A Friend
  Print
中華人民共和国駐大阪総領事館 著作権所有
http://osaka.china-consulate.gov.cn/jpn/