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米国GDP、不思議なデータの裏に隠された中国に対する焦り
2022-07-29 16:50

私は米国の47州を訪れており、行ったことのある場所は大多数の米国人より多いでしょう。米国について、ずっと不思議に思っていることがあります。それは米国のGDPです。

2021年、米国のGDPは23兆ドル、中国は17.7兆ドルでした。1人当たりGDPは米国が6.94万ドル、中国が1.25万ドルで、総額でも米国が中国を上回り、1人当たりでも米国が中国の6倍近くになっています。

もし、米国が今でも中国より強大で豊かなら、私も納得できます。しかし、実際に米国で観察していると、1人当たりGDPが6倍というその差は、大人はもちろん、子どもでさえ疑問に思うでしょう。

コロナ流行前、私は小学生の息子をニューヨークに連れて行きました。まだ社会経験の浅い彼は、私に3つの質問をしました。

なぜニューヨーカーは大通りで寝るのが好きなの?

なぜニューヨークの地下鉄はエアコンを使わないの?節約しているの?

なぜニューヨークのバスはあんなにうるさくて臭いの?

中国・寧波で育った息子は、確かにホームレスを見たことがなく、彼の乗っていた中国の地下鉄には全てエアコンがついていましたが、米国の地下鉄の全てにエアコンがついているわけではありません。中国は電動バスが普及していますが、米国のバスは、まだディーゼル車が主流で、確かにうるさく臭いのです。

ニューヨークの地下鉄

私が最も驚いたのは、この3つの質問そのものではなく、中国の子どもが、米国で最も豊かな都市で、親にこの3つの質問をしたというその事実でした。彼の人生経験は同年代の米国人と全く違います。いつの間にか、中国が例外に、外国が常態になってしまったのです。

米国に行ったことのある人は、その多くが私と同じようにこう思うでしょう。「米国のお金はいったいどこに使われているのだろう?!」

ある場所を理解する時に、一般的中国人が持つ視点は、「衣・食・住・行」に他なりません。

01 |

私にとって米国が最も裕福なのは、飛行機が着陸するまでの間に見える窓の外の景色です。都市全体を俯瞰でき、ロサンゼルスであれ、サンフランシスコ、ワシントンDC、ヒューストン、マイアミであれ、庭付きの独立したHouseが数十キロから数百キロに渡って続き、芝生、プール、樹木がその間を彩ります。これは多くの中国人が夢に見ながら一生かかっても所有できない「豪邸」かもしれません。

ヨーロッパの都市郊外にもそのようなHouseはありますが、その規模は米国とは比べものになりません。それは、ヨーロッパが米国より貧しいからではなく、米国の自然環境が良く、人口密度が低いからです。Houseは大量のエネルギーと土地を消費するため、米国のような国にしか建てられません。世界を見渡しても、カナダ、オーストラリアだけが米国に匹敵する自然条件を有し、比較対象になりますが、その他の国は遠く及びません。

値段から見れば、米国Houseは中国の家より高いというわけではありません。米国不働産仲介の最大手Zillowのデータによれば、2021年、米国の住宅の中央値価格28万ドル/軒で、200万元相当。一方、中国国家統計局公表のデータによれば、2021年3月、中国の平均住宅価格は1.1万/㎡。米国Houseはその多くが数十万ドル/軒なので、中国の家を売ったお金で、米国にHouseを持つことは全く問題ありません。

実際の建設費用から見れば、米国Houseは遠くからはレンガ造りのように見えても、ほとんどが木造で、工場でライン生産された材料を、積み木を積むようにして建てるため、コストは安く、スピードも速いです。逆に、中国の高層ビルの方がコストが高く、基礎工事に多くの費用がかかり、鉄筋もコンクリートも欠かすことができません。

大きな別荘に、広い芝生に、プール。ほとんどの中国人は、何日か滞在し、その目新しさを味わうにはいいでしょう。しかし長期間になると、「ホームシック」と寂しさはさておき、Houseの掃除やメンテナンスも体力的に大きな負担になりますメキシコ人労働者に頼むこともできますが、値段は高く、一般的な米国の中間層には手が出ません。米国で多くの男性が工具部屋を持っているのは、手作業が好きだからではなく、そのほとんどが節約のためのものです。米国で使用人を雇えるほど裕福なのであれば、Houseはとても住み心地がいいです。

米国人は自由に暮らし、洗練された雰囲気に溢れています。中国人は賑やかに暮らし、生活感が溢れています。生活は城壁に囲まれた街のようなもので、城内の者は外に出たがり、城外の者は中に入りたがります。そこにあるのは「差」というより、「違い」なのです。

02 | 食

米国最大のショッピングセンター「モール・オブ・アメリカ」に行ったことがあります。ミネソタ州に位置するそのショッピングセンターにあるものは、中国にも全てありますが、中国にあるものが、米国に必ずあるわけではありません。例えば、食事です。

中国のショッピングセンターのレストランは、バラエティ豊かなお店が次々に現れます。ウシガエル専門店、ロブスターの店、焼き魚の店、羊の背骨の店、潮汕牛肉火鍋店……米式ファーストフード、英国式茶菓子、日本料理、韓国式焼肉、香港式焼臘(ロースト肉類)……思いつくものなら何でも食べることができます。しかし、米国のショッピングセンターには選択肢がそんなにありません。

まず、米国人は生まれつき食べのこだわりが薄いということ、そしてもう一つ、個性派レストランは値段が高く、一般的な米国人でもレストランで自由に消費できるわけではないのです。これらの理由から、米国の飲食市場は中国に遠く及びません。

米国にはほぼナイトライフが存在せず、大多数の人が仕事が終われば帰宅します。一方、中国では大都市は言うまでも無く、山西省大同市のような都市でも、夜市がかなりの盛り上がりを見せています。

米国では、コーヒーはスターバックス、食事はマクドナルド、ケンタッキー、サブウェイ、タコベル、ウェンディーズ、バーガーキング……ほとんどが同じもので、お金を払って特別なものを食べようとしても、その選択肢が無いのです。米国はその祖先であるイギリスと同じで、食べ物はたっぷりあるものの、美味しいグルメが極端に乏しい国です。

03 | 衣

米国で街を歩けば分かりますが、ごく一部の大都市を除いて、米国人の服装は、よく言えばラフ、悪く言えばだらしないです。米中間に6倍もの一人当たりGDPの差があるなんて、その外見からは全く想像できません。

04 | 交通

20万元以下の車は中国が安く、20万元以上の車は米国が安いです。いくら安くても、米国の街を走るいわゆる高級車の割合は、中国に遠く及びません。中国は世界最大の自動車市場というだけでなく、世界最大の高級車市場でもあります。

2021年、世界の自動車販売台数は年間8100万台、うち中国の販売台数は2608万台で、およそ30%を占めています。米国は1500万台、EUは970万台で、欧米を合わせても中国の販売台数には及びません。

BBA(BMW、ベンツ、アウディ)の2021年の世界販売台数は、BMWが221万台、ベンツが205万台、アウディが168万台で、中国国内販売台数は、BMWが84万台、ベンツが75万台、アウディが70万台でした。中国市場のシェアは、それぞれ38%、37%、42%となっています。中国の高級車市場規模は、すでに数年連続で世界トップの座を守っています。

また、米国での車購入は、ほとんどがローンですが、中国人が車を買う場合、特に20万元以下の場合、ローン利用率は高くありません。米国の道路を走る車を見ながら私はいつも考えます。「米国のお金はいったいどこに使われているのだろう?」

米国の道路は、なんとか「まあまあ」と言えるレベルですが、世界一の経済大国には全く似つかわしくないものです。最も決定的なのが、橋梁です。私が米国で渡った危険な橋は数え切れないほどで、古びていて、錆だらけで、ギシギシと音を立てています。米国道路交通建設者協会(ARTBA)によれば、全米には5.6万基近くの橋梁に構造的欠陥があり、これらの橋を1日延べ1.85億台の車両が通過しているといいます。

もし、米国の道路建設や道路状態が中国より劣っていると言えば、必ず誰かが指摘してくれます。「調子に乗ってはいけない。中国はただ後発の利益にあずかっただけで、米国の道路は早期に建設されたため、もちろん中国には及ばないよ」と。こう言う人は恐らくドイツに行ったことがないのでしょう。世界最古の高速道路アウトバーンは、ドイツで誕生したもので、その状態は世界一で米国を圧倒してしまうでしょう。

米国の公共交通機関に至っては、完全に第三世界基準で、インドのニューデリーの地下鉄でさえ、ニューヨークの地下鉄よりはましです。米国の地下鉄は、最低限の「清潔さ・定時性・安全性」すらできていません。同じ100年の地下鉄でも、日本・東京の銀座線は世界的模範ともいえるのに対し、米国・ニューヨークの地下鉄は、人類の工業文明の恥です。

タイの経済指標を基準にすれば、米国の道路はそれほど悪くありません。しかし、米国のGDPはタイ(0.7万ドル)の10倍、中国(1.25万ドル)の6倍、ドイツ(4.5万ドル)の1.33倍なのです。インフラにおいて、米国のお金は完全に使い方を間違っています。経済発展と国民生活の根幹である交通整備が、米国ではなぜ遅れているのでしょうか。「米国のお金はいったいどこに使われているのだろう?」

コロナ前の長い間、中国は世界で最も消費する観光客の源でした。ヨーロッパの観光地で中国人を見かける確率は米国人よりずっと高く、米国の都市で中国人観光客を見かける確率は、中国で米国人観光客を見かける確率より遥かに高い状態でした。

十数年前、私が初めて米国を訪れた時、飛行機内の中国人と米国人は、ほぼ半々でした。コロナ前の数年間は、中国の航空会社であれ、米国の航空会社であれ、乗客の80%以上が中国人でした。この前訪れたアラスカのユーコンのキャンプ場では、周囲数十キロに渡り、めったに人が訪れないのですが、その小屋の中では90%の人が中国語を話していました。そこで売られていた主食は中国の麺類で、トッピングは地元産の天然サーモンでした。

世界観光機関の2018年の報告によれば、中国人観光客の消費総額は2580億ドルで、米国の1350億ドルを大きく上回り、ほぼ2~4位の合計額に近くなっています。このようなデータを見るたびにおもいます。「米国のお金はいったいどこに使われているのだろう?」

とにかく、もし米国は先進国で、中国より裕福だと言われれば、私は賛成します。もし米国が一年に生み出す富は中国より多いと言われたら、私は少し疑います。もし米国の一人当たりの富は中国の6倍だと言われたら、それは絶対に私の認識能力の限界への挑戦です!統計に穴があったか、基準が違うのか、きっと、どこかに問題があります。

改めて米国GDPの謎を詳しく見てみましょう。

まず、米国GDPの特徴は、サービス業の割合が高く、80%を超えています。同時に、モノを生み出す製造業はGDPの10%しか占めていません。

2018年、中国製造業の生産額は4兆ドルでしたが、米国は2.3兆ドル、日本は1兆ドル、ドイツは0.8兆ドルで、中国製造業の生産額は、ほぼ「米、日、独」の合計となっています。

最近、印象に残ったグラフを見ました。2022年、世界港湾ランキングトップ50です。トップ5がすべて中国勢で、トップ10に中国の港は8つ、トップ50に中国の港は29あります。トップ50に入った米国の港は4港に過ぎず、総合順位では韓国以下です。米経済の「実体経済から金融経済へ向かう動き」は深刻で、救いようのない状態にまでなっています。米国GDPの秘密は、サービス業の中に隠されています。

いくつか例を挙げてみましょう

経理

米国で最も奇妙なのが、確定申告です。ほとんどの人が加減乗除すら理解していないようなところで、どうして確定申告がこんなにも複雑なのか、まるで解読不能な各種「税金コード」を、ずっと不思議に思っています。基本的に、確定申告は、自身の収入所得の確定と、各種税金との相殺額の算出の2つの部分に分かれています。(うまい名目の立て方は、凡人には理解できません)。その差が、所得税の計算に使う収入となります。

家族は一緒に申告しても、別々に申告しても構いません。方法が異なれば、減免方法も異なります。また、免税額自体にも複数の計算方式があり、税法がここまで復雑になると、抜け穴も少なくないため、計算してみると、申告方式によって最終的にかなりばらつきが出る可能性があります。

米国では毎年1億5000万件以上の所得税の申告書が提出されますが、全く同じものを見つけるのは至難の業です。中国人なら、確定申告が面倒なら、12345政務サービスホットラインに電話すればいいのでは?と考えるでしょう。

そんなに簡単ではないのです。米国各州の税務局ホットラインに電話するのは天に昇るより難しいことです。以前、テネシー州の税務局に電話すると、25分も待たされ、ようやくつながった交換手の女性は、スペインなまりの英語で、決まり文句を読み上げるだけで、私には何の役にも立たず、互いに時間を無駄にしただけでした。

ここでもう1つ言っておきます。米国には、目に見える腐敗は確かに少ないですが、行政の効率の低さには、激しい怒りを覚えます。もし中国国内の「1度で完結」サービスを体験した方なら、米国の各レベルの役所には、絶対我慢できないでしょう。

米国では、複雑な税制が普通の人の手に負えない分、巨大な会計士チームが納税者の申告サポートをしています。AICPA(米国公認会計士協会)の統計によれば、2020年9月現在、米国には65万人の公認会計士がいます。彼らの平均年収7.9万ドルで、米国の平均年収より50%近く高いです。一方で、2020年3月現在、中国公認会計士協会の公認会計士は、10万8000人です。

中国の人口は米国の4.3倍なのに、会計士は6分の1に過ぎません。つまり、米国人1人が抱える会計士は、中国の24倍ということになります。会計士は物質的な富を生み出さない業界で、平均年収7.9万ドルで65万人ということは年収総額は513億ドルになります。その後ろには、65万世帯の中間層以上の家庭があり、その総人口は少なくとも200万人になります。

米国在住の多くの中国人が疑問に思うのは、中国にこんなに使い勝手の良い税金申告アプリがあるのに、米国人はなぜそれを真似て作らないのかということです。実際、米国にも有料の税金申告アプリはありますが、使用感が中国のそれに遠く及びません。米国にも確定申告システム、IRSのe-fileがあり、私も使用したことがありますが、中国の携帯電話による申告と比べ、まるで石器時代の産物のようでした。

資本主義の市場経済では、「絶大なカネの力」の中核的論理こそが、全ての現象の背後にある本質です。もし米国が中国のシステムを使ったとしたら、これほど多くの高収入の会計士は、どこへ甘い汁を吸いに行けばいいのでしょう。彼らは頭のいい資産家で、その組織勢力は強大ですから、ロビー活動をする団体を雇い、国会に根回しすることができるのです。

要するに、米国には目に見えない暗黙のルールがあり、それが米国のサービス業を守っています。既存のハイエンドサービスは、「針一本通らず、水一滴しみ込まない」強固なシステムで、たとえ科学技術が進歩しても、彼らがサービス業を「強く大きくする」動きは阻止できないのです。

弁護士

法律サービス業だけで、米国は毎年約2700億ドルの富を生み出しています。中国はというと、具体的なデータは見つかりませんでしたが、導き出すことはできます。その結果もほぼ間違いないでしょう。

弁護士数から見れば、中国は2021年で57万人、米国は2015年で130万人の弁護士がおり、米国の抱える弁護士は中国の2.7倍です。

一人当たりGDPの差から、米国弁護士の収入は少なくとも中国の6倍になります。ここから推論すると、中国の法律サービス業の規模は、米国の約20分の1になります。米国が2700億ドルなので、中国は最大でも1500億人民元です。

架空家賃

もし興味があれば、「米国経済分析局」のウェブサイトwww.bea.govをチェックしてみてください。その中に、私の見識を大いに広げた次の一文がありました。「Households with housing are officially regarded as the owners of unregistered enterprises, which produce housing services for household consumption.」(住宅を所有する家庭は、未登録企業の所有者と見なされる。これらの企業は、家庭が消費する住宅サービスを生産する)。

まあ、人間の言葉に置き換えると、米国では誰もが企業家ということです。自宅の「架空家賃」を経済総体に計上するだけでなく、主婦が家で行う家事もGDPに含まれるのです。高齢者介護から子どもの世話まで、洗濯・炊事から芝生刈りに至るまで、事の大小は問いません。

ネット上に出回っている有名なデータがあります。それは、自宅の「架空家賃」を計上する米国GDPと、計上しない中国に、それだけで1年に1.5兆ドルの差が生じているというものです。

実は、それは半分しか言い当てていません。中米両国のGDP統計は、基本的には国際ルールに則っていますが、具体的な作業においては、各国の状況に応じて、それぞれに適した対応が必要です。

「架空家賃」とは、住宅を所有していれば、自身が住んでいる、または空き家であっても、その家賃を市場価値で見積もり、GDPに計上するという考えです。

中国では減価償却法を用いて住宅の「架空家賃」を計算しています。毎年の「架空家賃」は農村住民の場合、建造コストの2%、都市住民の場合4%と定められています。北京市の平均建築コストは約3000元/㎡ですが、この方法で計算する60㎡住宅の「架空家賃」は約600元/月で、市場の家賃を大きく下回ります。統計によれば、中国の住宅保有率は85%を超えており、この「架空家賃」算出方法は中国のGDPを小さく見積もり過ぎています。

医療業界

米国は医療がGDPに占める割合も16.9%と異常に高く、大多数の先進国より高い数字です。これに対応するのが、先進国の中で最も低い米国の平均寿命です。米国人の平均寿命は現在、中国人よりも低く、医療への高い支出が、それに見合うリターンをもたらしていないことが分かります。米国の使えない医療についての一般的見方は、無制限の自由市場体制のもとで、医療機関と保険会社が独占的な利益集団を形成し、医療価格を押し上げているというものです。

米国人の平均寿命はすでに中国より短い

火災業界

米国最大のサービス業は「火災業界」、つまり「保険・金融・不動産サービス」の総称です。(FIRE Sector) Finance, insurance, real estate, rental, and leasing。火災業界は最も典型的な、実際の物質的な富を生まないレンティア経済です。

「火災業界」は2019年に合計4兆5418億ドルの価値を生み出しました。4.5兆ドルは、米国GDPの21.2%を占めます。一方で、中国の金融、不動産、賃貸、ビジネスサービスの2019年の付加価値は約2.6兆ドルで、中国GDPの18.1%を占めました。これだけで、米国は中国を1.9兆ドル上回りました。

建設業

2018年の建設業の付加価値額は米国が8400億ドルで、中国が9340億ドル、米国のわずか10%上回ったに過ぎません。これを見て驚く人も多いと思いますが、「インフラの鬼」と呼ばれる中国の建設業も、米国と比べるとその規模に大した差は無いのです。

次のデータを比較してみましょう。2018年のセメント生産販売量は、中国が22億トン、米国が8850万トン、米国は中国の25分の1です。粗鋼生産量は中国が9.3億トンで、米国が9500万トン、中国は米国の10倍です。中国は毎年、鉄道4000キロ以上、高速道路5000キロ以上、橋1万基以上を建設していますが、これらの数字は米国ではほとんどゼロに近いです。

2018年に中国で建設された住宅の竣工面積は41億3508万㎡で、米国で調べられた2016年のデータは1億8780万㎡で、中国の5%にも満たない数字です。これら主要建設業の生産データにおいて、中国は米国の数十倍から数百倍に達しているのに、米国建設業のGDP貢献度は中国と変わらず、ここから、その建設コストがどれだけ常軌を逸しているかを見て取ることができます。

つまり、サービス業が米国GDPの80%を占めています。米国人の支出の大部分は、「衣・食・住・行」ではなく、「経理・診療・裁判」であり、当然ながら最も大きいのは、その全ての背後にある「金融サービス」です。

また、感覚として、中国はいつもGDPを低く抑えられるよう手を尽くし、米国に続けてトップの座にいてもらおうとしています。なぜなら、二番手はプレッシャーも少なくて過ごしやすいからです。一方、米国はGDPを膨らませるために手を尽くしています。なぜなら、トップの座を失うという悲惨な結果に耐えられないからです。


まとめ

ここまで書いて、私が言いたいことは、米国がどれほど衰退しているかということではありません。実際、経済はある程度発展してしまうと、必ず金融化・サービス化してしまうものです。おそらく数年後には、中国の経済構造も現在の米国のようになってしまうでしょう。これは、経済発展の客観的法則なのです。

世界を支配する超大国として、米国は金融化の道を悠々と進むことができたはずでした。ところが、気が付くと目の前に巨人が現れました。米国の覇権が失墜すれば、単に衰退していくだけではなく、崩壊してしまうかもしれません。ぬるま湯に浸かり続けた軟弱者たちを、もう一度工場で働かせるのは至難の業です。

トップの座を譲りたくないなら、米国は、東洋の大国ととことん勝負し続けるしかありません。しかし考えてみると、米国の今の経済構造は、もはや冷戦時代のように天下無敵ではないのです。かつての米国の貿易戦争は、「邪魔する者は皆殺し」で、日本でさえ、震えながら許しを乞うてきました。トランプ氏が貿易戦争を仕掛けた際には、中国国内でも悲観的な見方が多かったものの、3年後、米国が始めた貿易戦争で、米国が引くに引けなくなるとは想像だにしていませんでした。今回のストレステストで、中国は自身の製造業がいかに強大になったかを思い知ったのです。

「平和な時代」のGDPと「対立の時代」のGDPでは、その重点が異なります。今の構造から見れば、中国のGDPは対立に適しています。でも中国は対立ではなく、平和的発展を望んでいます。それは、時間が私たちの味方についてくれているからです。

米国の弁護士や会計士サービスは、戦争や貿易戦争の役には立ちません。ハリウッド映画やNBAのスターたちは、なおさらです。3 nmの半導体は、スマホにはいいですが、戦闘機なら100 nmでも時代遅れにはなりません。例えばF22は、80年代にプロジェクトが立ち上がり、2000年にその型が決まりました。なぜなら、その半導体は90年代の技術だったからです。F35戦闘機用の半導体でさえ180 nmプロセスでした。

2022年6月、米空軍キャメロン・ホルト(Cameron Holt)少将は、こう発言しています。「購買力平価で計算すると、中国は約1ドルを費やすだけで、アメリカが20ドルのコストをかけて入手するのと同等の能力を得ている。もしコストを下げ、国防サプライチェーンを向上させることができなければ、私たちは負けるだろう」。

20倍というのは大げさだと思います。2倍だけでも、米国は中国の製造業に潰されてしまうでしょう。このようなシナリオは、ちょうど当時と真逆です。当時、米国は製造業の優位性によってソ連を追いつめたのです。

米国の焦りは、平和と対立の間で、板挟みになっていることでしょう。もし東方の巨大な龍との勝負を避けるなら、時間は米国の味方にはついてくれず、覇権は地に落ち、悔しいばかりです。とことん勝負するにしても、手中のカードはどんどん減り、思うように動けず、気持ちは焦るばかりです。これは、ひょっとすると米国覇権の更年期症候群なのかもしれません。


 
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