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中国駐大阪総領事館主催の新疆ウイグルツアーに参加して
2023-12-28 16:25

(大阪府日中友好協会会員  坪井道明)

 皆さんは、「新疆」または「ウイグル」というワードを耳にして、どんなことを思い浮かべるでしょうか?

 多くの日本側メディアによる情報は、偏向性が強く、マスメディアとしての使命であるはずの客観的、公平性を保っていない内容については、正直なところ、心を痛めています。

 今般、中華人民共和国駐大阪総領事館(以下「総領事館」と略記)主催による新疆へのツアーが催されることとなり、その第二陣メンバーとして参加する機会を頂けたので、「リアルな新疆」を日本の方々に広めていかなければいけないという“任務”を感じました。

 新疆ウイグル自治区については、まったく関心がなかったこともあってか、偏向的報道による情報を鵜呑みにすることもなく、それゆえ、客観的な観察が出来たのかもしれません。

 それでは、新疆ツアーに参加して感じたこと等を、ジャンル別に紹介していきます。


 《新疆ウイグル自治区の概要》

 面積は、約166万㎡もあり、中国大陸の1/6を占める広大な土地を有します。この広さを関西で当てはめると関西広域連合を構成する府県(大阪府「大阪市と堺市を含む」、京都府「京都市を含む」、兵庫県「神戸市を含む」、奈良県、和歌山県、滋賀県、鳥取県、徳島県)の合計面積の約48倍もの広さがあります。人口は、約2600万人で、同じく関西広域連合の構成府県の合計人口より約500万も多いです。

 中国の主たる民族は、「漢族」であり、それに少数民族を足すと全部で56の民族です。

 

 その56の民族すべてが、新疆ウイグル自治区の中で生活をしていることもあり、新疆は、いわば「中国の縮図」としても知られています。そしてよく知られているキャッチコピーが『不到新疆、不知中国之大』… 新疆へ行かなければ、中国の大きさが分からないです。

 続いて、《新疆の「疆」という字について》です。

この字の意味をツアー滞在中に調べても、納得できる答えが見つからなかったが、本稿の締切間際に、薛剣総領事の呟きSNSで紹介していた中で、目からウロコが落ちるような回答を見つけたので、ご参考までに情報共有致します。

 発信は202312419:28 Xより転用(転用許可は総領事から頂いております)

 ウイグル族の克孜さんの解説によると、「疆」という文字の左の「弓」は、新疆5,600kmにも及ぶ長い境界線を表し、「弓」の中の「土」は、境界線の内側にある土地という意味を表現し、「中国領土の不可分の一部」を表しているとのこと。右側の「つくり」の字体の解釈は、三つの「一」は、まさに三つの山脈(阿尓泰、天山、崑崙)を象徴し、二つの「田」は、上述三つの山脈に挟まれる二つの盆地(ジュンガルとタリム)を象徴しているとのこと。

 即ち新疆の「疆」という字には、現地の地理形成を見事に一文字で表現した傑作品である。


 《新疆およびシルクロードと日本の関係》

 今回のツアーの中で感じたことの一つに、新疆を起点とする「シルクロード」の開拓により、日本の「仏教」が伝来していった史実を知ったことだ。学生時代から暗記科目が苦手で、歴史科目についてはまじめに勉強をしてこなかったことが知識不足の大きな要因の一つではあることは承知しているので、その点においては、ご諒恕いただきたい。

 さて本題に話を戻して、インド仏教(密教)の説法を聴くためにウルムチから東に約180kmのトルファンを訪れた際に立ち寄った『高昌故城』のある半洞窟状の遺跡が、その場所の一つだと聞いて感慨深さを感じた。ほかにも、千仏洞(火焔山近く)や、克孜尓石窟でも日本の修行僧が立ち入った歴史があったようで、新疆ウイグルと日本の関係は、調べてみるだけではあまり実感がなかったので、このツアーに参加させて頂けたことは本当に不思議な縁を感じます。

 個人的な内容ですが、もともと私の家系は真言密教系であったが、祖父の時期に不幸が続いて神道に変わりました。しかし、大阪の駅名に「道明寺」(近鉄南大阪線)があり、また、高野山奥の院に足を踏み入れた時に、何かを感じるくらいの「縁」があります。

 そういった事情背景も相まって、仏教伝来の歴史の地に足跡を残せたことは、先祖からのお告げだったのかも知れません。

 付け加えて一言申し上げると、これら仏教伝来の重要な遺跡(土壁画)の多くが、「大谷光瑞」というインドから日本へ戻る途中に立ち寄った探検家らによって大量に強奪されたことが現地では誰でも知っている事案であり、ネットで調べてみると面白いことが判明。

このことについては日本側と中国側で紹介されている内容に大きな開きがある[添付図像参照]ことを知って、国立国会図書館のサイトの問合せに中国側での紹介概要を伝えた。

そう考えると、日本人が中国各地や旧満州国時代にやってきた愚行について歴史資料の公開制限を敷いていることをし続けていては、後世の友好関係を担う若者にとって非常にマイナスの要素となるので、是正を申し伝えました。

 

                     

 《新疆各地の簡略的景観と都市について》

 新疆の広さは上述した通り、非常に大きいため、大変風光明媚な景色が、四季の移り変わりによって様々な表情を魅せてくれ、その素晴らしい景観を実際に見るために、写真家や登山家をはじめ、国内外から多くの方が新疆を訪れるようになり、また習近平国家主席が注力してきた脱貧困政策も相まって、それまで格差が大きかった農村地域でさえも、近未来的な機器の導入(例えば、ドローンなど)により効率的、また人間が立入り困難な崖淵や、手の届きにくい箇所にも、これらの機器を活用することで管理ができるようになり、また同時に収入が格段に向上したことで、投資物件を取得して副収入を得られるようになったり、自家用車を購入できるようになったことで気軽に移動ができるようになったりと、日本の低所得者層の収入を凌駕するくらいに経済循環が潤沢化していることを、綿花農園や製糸工場での見学によって知ることが出来た。

 

 高規格道路をはじめ、車が走りやすいアスファルトの整備も急ピッチで進み、高層住宅街の生活インフラ整備も凄まじい伸びを感じた。肌感覚ではあるが、私が「北京市の未来都市計画を都市文化経済学の観点から考察する」という内容で大学の卒業論文を書いた1999年以降、その取材先で仲良くなった女性を訪ねるために、大学を卒業してからも頻繁に北京を訪れていた過去があって、その時の北京の都市経済が急速に伸び始めていた頃の様子に似ていると感じたからである。北京以外にも、中国の主要都市でも上海万博で展示されていた中国高速鉄道ネットワーク拡張計画と未来の展望による恩恵を紹介するPV(プロモーションビデオ)では、出稼ぎ労働者が中国の大型連休(春節や国慶節など)に“緑皮”と呼ばれて親しまれてきた機関車による牽引で走行できる客車に乗り、24時間以上も要していた地域とを、高速鉄道の敷設・開業によって、数時間で行けるようになれば、週末の期間で頻繁に離れて暮らす両親や子どもに会いに行ける明るい未来社会を描いた内容だったのが新鮮で、日本ではこんなPVの編集はないと感じつつも、家族愛が世界一強いと感じる中国だからこその編集方法である。

 新疆でも東側に位置する甘粛省の省都「蘭州」とウルムチを結ぶ高速鉄道が開通していて、

 【国务院关于印发中国新疆自由贸易试验区总体方案的通知】に記載されていた部分では、高速鉄道の計画を、西端のカシュガルまで延伸させて、ウルムチから約4時間半で結ぶ計画があった。現状では約12時間の列車旅を選択するか、2時間ほどで移動できる飛行機を選択するかだが、この高速鉄道が開通すれば、途中のトルファンやクチャやアスクなども停車することから、人々の移動選択が増えることができるし、欧州から通じている鉄道輸送の沿線上に自由貿易試験区の拠点があり、様々な貨物の取り扱いがスピーディーに行われることで、益々の経済循環が活発化されることは、隣国である日本にとっても、中国の鉄道輸送を併用活用することで、中央アジアや西アジア、ヨーロッパとの交易輸送手段の選択が増えていくことは、有益だと思う。

 我々のツアーでは幸運にもトルファンからクチャまでの6時間という長距離(約650km/東京姫路間に匹敵)を列車「T9526/ウルムチ~カシュガル間で484.5元(A寝台)」で移動できた(第一陣はバス移動だったようで、第二陣以降のために列車移動を推奨してくれていたようだ)。

 

車窓からの風景を眺めていた中では、タクラマカン砂漠をひた西へ走る中で、時々交差したのが、高規格道路(片側3車線の6車線アスファルト整備道路)と建設が進む350km対応の高速鉄道の敷設工事の様子、および緑化推進の苗木の植樹と大量の風力発電装置だった。また途中の停車駅では駅前周辺の整備が進んでおり、居住も平屋トタン屋根土壁のようなモノでなく、25階以上の高層マンション群だった。ここもあと数年後にはかなり発展するのかなあと感じた。

 今回、中心都市の烏魯木斉(ウルムチ)、葡萄の都・吐魯番(トルファン)、庫車(クチャ)、阿克蘇(アクス)、喀什(カシュガル)と、いわゆる南新疆を巡り、カシュガルからウルムチまでは中国南方航空のB787[CZ6806]に初めて乗ることができ、感無量でした。

 

全体的な地理から新疆を紹介すると、東西に7000m級の峰を持つ天山山脈があり、その北側と南側に位置する地域で、それぞれ「北疆」と「南疆」と呼ばれているが、私は敢えて東西南北でエリアを区分けし、それを領事館主催の作文コンテストに出品し、受賞を頂いた。同行したメンバーの伊関要氏の図らいでプレゼンの場で紹介した図を用いて新疆の景観エリアを示すと次のように表現できる。*散文詩の作品は、のちのページで紹介*

 ―東疆地域を「哈密」、西疆地域を「喀什」、北疆地域を「伊犁」、南疆地域を「昆侖」-

 やはり、実際にその地へ訪れると現地の地名を意外と覚えることができ、長年見たことがある「和田」という地名は、なんと新疆にある地名であったことがわかった。

 今回のツアーは、コロナ以前から企画があったが、感染拡大防止の渡航制限と防疫措置により、やむなく延期していたツアーだったようです。延期による空白期間が生じ、日中間の人的往来が停止したことで、今後の交流手法に様々な意見が出て、なかには事実に基づかない内容を、個人のSNSでの発信だけでなく、大手マスコミも取り上げたことで、日中友好の大切さや取り組みに係る指針についても見直すくらいに至り、大変心を痛めた一方で、「真心英雄」という楽曲(李宗盛作詞作曲、成龍・周華健・黄耀明・李宗盛による合唱曲)中の「不经历风雨 怎么见彩虹」が表す通り、“虹を見るには、風雨を経なければならず”、先の渡航制限により見直しの機会を得られたことで、改めて日中の友好関係構築のためのベクトルをどう示していくのか、また戦後の前線メンバーだけでなく、次世代の梁となる若者も積極的に取り込み、同一世代と異世代間のハイブリッド式交流を絶やさないこと。さらには、やはり画面越しでの交流よりは、実際に相手方の国を継続的に訪問し、直接会って対話することで、友好的また戦略的互恵関係の堅実さが如何に大切であることを感じれる。

2023年の6月に第一陣が現地人と交流を行い、戻ってきたメンバーの表情を見ると、みなさん本当に輝いていました。だからこそ、私も次のタイミングで行きたいと思っていたさなかで、総領事館のメンバーからメッセージが届いたときは本当に嬉しく、難関試験の合格を勝ち取ったときのような感覚でした。


《旅程の後半に訪れた「カシュガル」という都市について》

新疆ウイグル自治区の西側であり、また中国の西側でもあるカシュガル(喀什噶尔)の概要を簡略的に紹介します。

 色とりどりの煉瓦がある瓦屋(有各色磚的瓦屋)。ウイグル語で「宝玉石が集中する地」。

 居住人口については、2022年の統計(新疆吾尔自治区第七次全国人口普 喀什地区2022年国民经济和社会统计)によると、約450万人である。この人数は、2023年11月の大阪市の約270万と堺市の約80万の合計より多い大都市。

(ちなみに東京23区の居住人口は約970万)

カシュガル市の位置関係は、北緯3928分、東経7559分であり、日本では岩手県中尊寺や秋田県象潟市、アメリカではメリーランド州ボルチモアが同じ北緯39度帯に属す。ちなみに、大阪は北緯34度帯に属します。

カシュガルに関する経済データを国家統計局喀什(カシュガル)調査隊が202356日に公布した情報『http://www.tjcn.org/tjgb/31xj37582.html』によると、「GDP」は、1368.56億元(対日本円レートを20で換算すると、27371.2億円)でコロナ期の2021年度よりも3.1%上昇。「CPI」については、対前年比2.1%の上昇。建築業における数値では、171.94億元の売り上げで、対前年比で15.9%の向上で、企業利潤値は4.72億元(対前年比で72.2%の増加、そのうち国有控股企業の成長は、2.83億元に達し、対前年比で217.2%の成長)

 一方、対外経済のジャンルでは、輸出入貿易総額は、493.13億元(輸出が477.66億元で対前年比111.3%の上昇。輸入は15.47億元で200.4%の上昇)で前年比113.3%の上昇。

 税収の面では、35.81億元(7200億円に相当し、大阪市の7860億円より些か低い少ない)

 このように見ても、カシュガルの都市経済が如何に成長段階であることが分かる。

(ほかにも詳しい内容を知りたい方は、上記のURLからご参照ください)


《新疆の中心都市「ウルムチ(烏魯木斉/ウイグル語で、「精美な牧場」という意味)」とカシュガルの距離感》

飛行機では約二時間の航路距離であり、関空から北海道や、沖縄までの飛行時間に相当。

鉄路では、約1500m級で、北京から黒竜江省のハルビン、北京から上海までの営業キロに相当する。日本で相当する距離は、東京から西鹿児島(寝台特急「はやぶさ」)や、大阪から札幌(寝台特急「トワイライトエクスプレス」)の営業距離に相当するくらい離れている。

我々がツアーの途中に使用した列車(T9526)での所要時間を例に挙げると、烏魯木斉(12:05)に出発後、烏魯木斉南(12:18/12:22)、吐魯番北(14:01/14:36)、焉耆(17:12/17:14)、庫尓勒(17:48/18:15)、庫車(20:36/20:42)、阿克蘇(22:42/22:50)、巴楚(02:02/02:14)、喀什04:45)と、実に16時間半も要す。しかし、ウルムチとカシュガルの二点間のみを結ぶ直達列車が誕生し、多くの乗客から好評を得ているようだ。運行時間は次の通り。

 ウルムチ(22:00)→[Z6515]→カシュガル(09:30)、カシュガル(21:30)→[Z6518]→ウルムチ(09:00)と、上述の列車より明らかに速い。加えて、この二区間では、航空便がシャトル並みに運航されていて、我々が登場した中国南方航空の大型機B787でも満席。

 それゆえ、最高時速350km/hでの高速鉄道の建設も決まり、数年後には鉄道と航空機のバトルが成り立つのではないかと感じている。その足掛かりとして、自由貿易試験区が、烏魯木斉のほかにも衛星的な位置づけとしてカシュガルにも設置されたことで、今後ますますより多くの交易活動が盛んとなると予想できる。



 《カシュガルに住む人々の都市生活環境について》

堺の刃物や、東大阪・八尾の工場地域のようなモノ作りをしている都市で、銅や真鍮細工などのデモンストレーションをしていて販売をしているエリアもあれば、農作物の店頭販売を行っていたり、お土産品や特産物の販売による商人の呼びかける声が響き渡っていたり、モスクエリアでは宗教系の活動のほか、カシュガル古城では毎朝特定の時間に民族衣装をまとった演者が、伝統芸能を披露し、その光景を見るために、異常なほどの鑑賞客が見えて、街全体に大変活気があったことが印象深い。


しかし、習近平国家主席が新疆地域への近代化改造計画が実施される以前は、非常に貧困地帯でもあり、また地殻活動(所謂「地震等」)が発生すれば、すぐに崩壊してしまうような貧素な家屋の造りだし、雨量が多いと水はけが悪くて不便な移動を強いられていたようだった。それを一気に強固かつ後世に残していける美しい家屋へと軒並み改良し、そこで暮らしていた多くの家族に笑顔をもたらし、生き甲斐を与えて、観光都市として国内外から来る観光客をもてなし、その売り上げなどで生活も大きく改善され、Wikipediaでは2000年代初期の居住人口は数万人というデータから更新されていなかったので、国家統計局の2022年度のデータを用いて約450万人と情報を更新した。

都市交通の面に於いては、最近主流のBRT方式のバス輸送システムも採用されている。特定時間帯では独立した車線レーンを進むことができ、定時性の確保がなされている。また、電気バスや連接バスも走っていて、これらは中国政府だけでなく、経済的にゆとりのある地域(たとえば、上海・深圳)が直接投資をして新疆を支援する「援疆」政策もあって、急速に発展を遂げていった。このような都市創生の政策手法は日本で見られないのが特徴的だ。

 

 また、生活時間においては中国の標準時間(西安基準)[日本では明石に相当]で社会生活を設定すると、始業時間は早すぎる。そのため、感覚的には2時間ほど遅く設定してる。

 中国の始業時間で9時ならカシュガルでは中国標準時間の11時からとし、終業時間も約2時間ほど遅れて終わる。この事情は、現地へ行けば自ずと分かる。それゆえ、夕暮れの下校時の時間は、中国の標準時間で20時であっても、まだ明るいのだ。

 夜もレストランが軒を連ねるエリアでは、子どもを連れながら大人たちは酒を飲み交わしており、ウイグル族のグループ、漢民族のグループというふうに民族別で盛り上がっているかといったらそうではなく、やはり子ども同士仲がいい家族では、異種民族であっても、意思疎通のために、中国の標準語を話しながら、ウイグル料理に地ビールを嗜みながら交流を深めている実際に光景をみたら、日本側メディアで紹介している「民族弾圧」や「漢語の強制使用」なんてモノは存在しないということも自ずと明らかだ。

 また、決められたスケジュールを終えてホテルに戻った後、ホテル周辺を散策した際に、駐車している車の中で、ブランド高級車も比較的多く散見され、ヨーロッパ系だけでなく、日系メーカーの車も多数見かけることがあり、中国国内で日本車を手にするのは、富裕層の居住が多いことを示している。さらに料理で盛り上がっているグループもあれば、音楽を伴いながら踊りをしていりグループも散見され、昼夜を問わず活気に満ち溢れていた街の様子から、カシュガルの数年後が大変楽しみに感じた。と同時に、カシュガルという都市文化や人々の様子から、仮に烏魯木斉(ウルムチ)を「関東っぽい」と譬えるなら、喀什噶尔(カシュガル)は「関西っぽい」と譬えられるのではないかと直感した。だからこそ、関西とカシュガルの両地域で交流する機会が増えれば、地理的には5,000km以上離れていても、心の距離は果てしなくゼロに近くなるだろうと心願している。

ただ残念ながら、現在のところカシュガルと日本を直接結ぶ航空路線がないので、双方の交流が益々増えていくための開拓に携わりたいと思うようになり、仮想のフライトプランを立て、無理があるかを実際に航空路線の運航計画を担当している元の会社の同僚に提示したら、運航時間的な点においては問題ないとのことだったので、紹介します。仮に実現しても、実際にこのダイヤになるとは限らないので、その点は、ご了承いただきたい。

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 [往路]

  ⇒ CKG(重慶)14:00 / 15:30 ⇒

 KHG(喀什)/ 09:30                 KIX (関空)20:00

XIY (西安)14:00 / 15:30 ⇒

 

[復路]

  ⇒ CKG(重慶)12:00 / 13:30 ⇒

 KIX (関空)/ 08:30                 KHG(喀什)/ 18:30

XIY (西安)12:00 / 13:30 ⇒

*重慶経由と西安経由は、特定曜日で交互に運航*

LCCなどで汎用されている機材での航続距離以下の通りで、安全のために途中給油する

措置を講じるため、また顧客利用の幅を増やすために、類似距離の重慶と西安を経由地に。

 [ A320-2006,100km)、B737-8005,665km)、C919胴長版(5,555km]

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 《カシュガルの小学校を訪問して》

 訪れたところは、第11小学校で、習近平国家主席も訪れた進学校のようだ。

 我々のような参観者がライブ授業を見学できる体制が整っているのか、外部者が来たことで緊張している雰囲気は微塵も感じられず、淡々と授業の話に耳を傾けていた。

 校庭では、サッカーやバスケットボールなどの球技のほか、室内での教室においては音楽、数学、英語の授業を行っていた。学生同士の会話は、多民族での共通用語として「普通話」である一方、英語に於いては、理解の深度を充実するため、英語のあとに普通話とウイグル語で意味を説明していて、決してウイグル語を使用してはならないという一部の日本側報道が虚偽であることを示してくれた。また、校舎にも多民族国家を形成する中華人民共和国としての共通理念を周知するために、漢字とウイグル語で掲示していた。

 

《新疆と「一帯一路」について》

 先の頁でも少し触れたが、2023111日に、【国务院关于印发中国新疆自由贸易试验区总体方案的通知】という計画書

(https://www.gov.cn/gongbao/2023/issue_10826/202311/content_6915821.html)

が公開され、新疆の経済特区からより深化させて、新疆自由貿易試験区(上海では浦東新区に設定されおり、外資系企業参入の促進や、さまざまな税制優遇がある)に誕生する自由貿易試験区で経済活動(商用事業)を行うための審査基準項目の中で、「カーボン・ニュートラル」(脱炭素化)の取り組みに賛同し、一定の基準値内で事業を行える会社しか申し込みできないのが特記すべき事項だろう。

 中国は世界経済を牽引する責務として、国際的に関心が高まっている事象に積極的に協力していく姿勢が、この未来計画書からも垣間見える。

 また、新疆という地域が、雲南省と同様に、中国の西側に位置しており、鉄路や道路で隣接国を通っていけば、陸路で欧州諸地域にも繋がる経済ベルトが誕生できる国際経済の活性化にも優れた政策の「一帯一路」。こういった地理的な優位点を踏まえて、烏魯木斉をメインとし、カシュガルにも試験区の一端を担う拠点を設けるようで、今後ますます増えても対応できるように国際空港の敷地拡大や、貨物駅のヤードを、試験区の近くに設けるなど、動線的にも無駄のないような配置が計画されている「攻め」の姿勢は、今の日本には参考にすべきだろうと考える。

 中国の「一帯一路」政策について、少し私見を述懐すると、日本と中国は陸続きではないため、あまり関心がない人が多数いるが、中国の新たな成長戦略を好意的に受け入れている方々や、大局的に、また計画を俯瞰視できる方々からすると、日本も中国の「一帯一路」構想に参入し、海運による障害を回避できるメリットと、鉄道輸送によって欧州までスピーディーに貨物輸送を提供しているレールウェイネットワークを活用することで、日本から航空輸送で欧州諸地域との貿易活動もローコスト化が実現できるメリットもある。

 そういった背景も踏まえて、2019年の秋に私は、日本と中国の二国間で航空輸送の「快速通道」のシステムプランを提唱し始めた。その概要は、以下の通りである。

 コロナの感染により国外への渡航制限が実施される直前の2019年末の時点で関西国際空港から中国への就航都市数(旅客および貨物を合わせて)は、羽田と成田を合計しても多い約50都市と結ばれていたのだ。その利点を活かして、関西空港の敷地内に中国の「海关」を外国公館として設置し、日本側で中国の税関検査を実施できるようになれば、機長託送扱いで中国側での税関検査無しで速やかに国内での輸送が実現でき、現状中国の特定港湾施設でしか実施できない通関検査を異国の地で出来るようにしてしまう画期的な国際物流システムの構築にも繋がり、関西空港が「アジアのハブ空港」として目指して成長してきた努力を後押しできることに繋がると自負している。しかしこの夢のような構想の実現には、両国の関係者による賛同が大きくならなければ難しいし、ある人によればアメリカの同意を得るのが至難で実現不可能と指摘を受けたが、成長の著しい中国の特定港湾での処理総量と負荷を緩和することにもつながり、また内陸地(たとへば新疆や雲南など)へ直接空路で運び、自由貿易試験区で荷分けして陸路(鉄道輸送含む)で二次輸送できれば、日本側にとっても、中国側にとっても大きく、また新しい価値を創出することにもなるであろう。また西側諸国の産業製品や郵便書類などを中国の国内保税状態で関空まで運んで、日本側で中国の通関処理をして、連続して日本側の通関処理をすることができれば、川崎東国際郵便処理施設でのキャパシティにも一定数の余裕ができることにもなるだけでなく、関東地方での甚大な自然災害の発生時にも大きくバックアップすることもできるため、有益性の高いシステム体制となる。


 《新疆ウイグル自治区のツアーを振り返って》

 今回の新疆への訪問は、私にとっても初めての内陸地への訪問であり、個人での行動と団体での行動のそれぞれで感じることが同時に体験できた、大変有意義な時間と機会を頂いた。また初めにも書いた通り、「シルクロード」のおかげで、日本に仏教がひろまったこと、また捏造報道された記事と写真の出処を分析し、正しい報道の意義と大切さを改めて感じさせられた「新疆的反恐和去極端化闘争主題展」

での展示資料の数々。カシュガルの西側にあるカラクリ湖へ立ち入るための許可申請で通信上の不具合によって緊迫した確認作業が必要となっても冷静に対処していただけた関係者の皆さんと高山病発症時を含め、不測の事態に迅速に対応するために随行してくれた医療隊の存在のおかげで、参加者全員が無事に帰国の途につくことができたことに、改めて厚く御礼申し上げます。

そして、ツアー参加者全員が応募できる作文コンテストには、敢えて日本語での作文とせず、中国語での散文詩スタイルとして独自性を出しつつも、内容で新疆のことが分かるような感じに仕上げたかったので、8字を一行としたスタイルでまとめてみた。そして有難いことに一定の評価を頂けたのだが、その結果を公衆の前で告げられた資料には日本語での訳文が付記されていないため、同ツアーの参加者であり、府日中友好協会の会員でもある伊関氏が主催したイベントに来てくれていた両親から指摘を受けたので、本稿で原作者による訳文を紹介することにします。


访问新疆自己】…  【新疆を訪問すれば、己を知れる】

人生的路不是平坦   人生の路は平坦ではない

坎坷    時には険しかったり、時にはでこぼこだったり

人生如海潮起潮落    人生は海のように潮の満ち引きがある

喜悦有悲哀    嬉しい時もあれば、悲しい時もある

哪怕眼前恍惚渺茫    たとえ目の前がぼーっとしてしまっても

不要害怕不要紧张    怖がらず、緊張しないで

哪怕路上孤苦伶仃    たとえ路上で独りぼっちでつらいと思っても

不要忐忑不要委屈    心理的に不安になったり、縮こまったりしないで

一起仰望斑未来    一緒に素敵な未来を仰ぎ見よう

一起踏上一一路    一緒に一帯一路を闊歩しよう

新的自己     新しい自分をさがすために

振翮高到     翼を広げて高く羽ばたいて

丝绸之路美景新疆     シルクロードの美しい新疆へ

那里有人的魅力     あそこには人を惹きつける魅力がある

北疆伊犁南疆昆     北には伊犁があり、南には崑崙がある

西疆喀什疆哈密     西にはカシュガルがあり、東には哈密がある

天山的存在像父     天山の存在は父のような存在で

塔里木河是像母     タリム川は母のような存在

疆央有"精美的牧"    新疆の中央には綺麗な牧場と呼ばれるところがある

                     (ウルムチの意味を指す)

所以天空清澈     だから、空は澄んでいて綺麗なんだ

""你的心解    ウイグルの雲があなたの心をラクにしてくれる

"维鸟"你的心安慰    ウイグルの鳥があなたの心を癒してくれる

""烦闷抹去    ウイグルの食があなたの煩悶(はんもん)を拭い去ってくれ

""力忘掉    ウイグルの踊りがあなたのストレスを忘れさせてくれる

中国好多民族     中国にはたくさんの民族があり

各民族要像石榴籽     各民族がザクロの実のように

样紧紧抱在一起     しっかりと手を取り合わなくちゃいけない

要以牢中民族     中華民族共同体意識が主線であることを

共同体意识为主线     しっかりと捉えなくてはならない

一方有难八方支援     一方に困難が有るなら八方から支援する

              (中国人の団結協力思想を表現した慣用句)

我看"行旅"去一个人    私が思う「旅をする」とは、

回顾自己一举一动     己の一挙一動を回顧し、

改变自己后会得了     自分が変われば、そのあとには

新世界观之空间轴     新たな世界観を得られる空間軸で

"旅游"是跟友一起去    「旅行」とは友だちと一緒に出掛け

深化友谊加强交流     友情を厚くし、交流を強めていける

的非日常之时间轴     非日常的な時間軸として捉えている

访疆做"萨拉木里坤"    新疆を訪れたら“手に胸を当てて挨拶しよう”

             (ウイグル式あいさつで、握手ではない)

一定会成"心心相融"    そうすれば現地の人と打ち解けあえるし

一定会唱"同一首歌"    同じ歌を唄って馴染むことができるから

风月同天携手并进     大変な時は手を携えて歩んでいこうよ

中日友好敬邻永安     日中の友好は隣人を敬うことで初めて永安を得られる

             (中華人民共和国駐大阪総領事・薛剣閣下の造語)


《結びにかえて…》

「また行ってみたい」と感じた、8泊9日での新疆の旅をコーディネートし、サポートして頂いた中華人民共和国駐大阪総領事館の皆様、中国国際旅行社(CITS)の楊さん、張さん、渡瀬さん。新疆対外友好協会の任主任と羅さん、「人民中国」の雑誌を手掛ける中国外文局アジア太平洋広報センターの金さん(3日目のトルファンでの夕飯の席が大きな円卓で一同できたので、全員で自己紹介をしたらどうだろう発案してくれ、それがきっかけでお互いメンバーのことを知ることができ、団結力が生まれるキッカケを作ってくれた立役者でもある)、現地ガイドのヌルさんと数千キロの道を事故無く運行してくれたドライバーさん、本当にお世話になりました。


 《新疆は、良いところ》

 今回の旅のツアーでは、上海からの観光客、とりわけ退休した年齢の男女が多かった。

 聞けば、「定年を迎えたら一度は新疆へ行くべきだ」という考え方があるようで、多くの上海人が新疆を訪問している。春秋航空も2017年に上海からカシュガルまでチャーター機を就航させたりして、積極的な支援活動に貢献している。

この記事は、https://m.163.com/dy/article/IL8RLILR05149O6E.htmlを参照ください。

 それでは最後までご高覧いただき、ありがとうございました。



筆者 坪井道明 1975年生まれ。阪神淡路大震災の直後に神戸市内の大学へ入学。

   都市文化経済学科を専攻し卒業。大学時代に知り合った中国からの留学生の

   優しい人柄によって、中国へ興味を持つ。独学で中国語を学び、カルチャー

   スクール的なレッスンとして、盧思・相原茂・段文凝の中国語講座を受講。

   乗り物関連の仕事に長年携わりながら、NPO大阪府日中友好協会の会員に。

   SICPという個人事業を立ち上げ、都市交通に関連した政策意見や民間企業へ

   斬新なアイデアなどを提供している。


 
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