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運命を共に大道を歩み、手を携えて良き未来へ――薛剣総領事の関西プレスクラブでの講演(全文)
2024-02-29 13:21

ご来賓の皆様、友人の皆様

 こんにちは。中国駐大阪総領事の薛剣です。皆様、ようこそ総領事館へお越しくださいました。本日の講演の開催にあたり、関西プレスクラブの多大なご支援とご協力に感謝いたします。本日は、「運命を共に大道を歩み、手を携えて良き未来へ」というテーマで、昨年末に開かれた中国共産党中央外事工作会議及び海外駐在使節工作会議の二つの重要会議の内容を主軸に、新時代の中国外交について皆様にご紹介し、新しい情勢における中日関係への私なりの考えをお話したいと思います。

 世界は今、百年に一度の大変革の中にあり、世界経済はなかなか回復がにぶく、地域における衝突が後を絶たず、気候変動などの新しい問題も次々に現れ、人類は多くの課題に直面しています。グローバル経済の「パイ」をどう大きくし、上手く分配するのか。異なる文明・民族・国同士の共存の道をどう切り拓くのか。私たちがともに暮らす地球をどう守っていくのか。これは時代が人類につきつけている難題です。中国は責任ある大国として、これらの問題に対し、中国なりの回答を導き出していることです。

 昨年末、中国共産党中央外事工作会議と海外駐在使節工作会議が北京で成功裏に開催され、習近平主席が重要演説を行い、全世界にその回答を示しました。2つの会議は中国外交の一里塚としての意義を持つもので、これまで10年間にわたる新時代の中国の特色ある大国外交の歴史的成果と貴重な経験を全面的に総括し、今後の対外活動が直面する国際的環境や担うべき歴史的使命について深く解説し、当面そして今後5~10年ひいては更に長い期間における対外活動について全面的な計画をたて、その実益性に富む内容は、全世界から大きな注目を集めました。二つの会議の参加者の一人として、私はこの機会に、過去・現在・未来という3つの次元からその内容をご紹介させていただきます。

 過去を振り返ってみると、「守正創新(正しい道を守りながら革新を図る)」が、新時代の中国の特色ある大国外交における貴重な経験の一つとなりました。皆さんもお気づきのことと思いますが、中央外事工作会議のプレスリリースでは、3度もこのキーワードに触れています。新時代の10年で、中国外交が並々ならぬ歴史的プロセスを経て、世界に注目される歴史的成果を成し遂げたことは、この「正しい道と革新の心」なしには語れません。この言葉が持つ重要な意義を掘り下げることが、今回の会議の精神を理解し、今そして今後しばらくの中国の対外活動における考えを知るための「金の鍵」なのです。

 いわゆる「正しい道を守る」とは、中国外交の優れた伝統と根本的方向性を守ることです。新中国成立以降75年の対外交流において、私たちは常に独立自主の基本原則に則り、全世界を胸にとの初心・使命に基づき、平和発展という根本的方向性を堅持し、公平正義の理念信仰を守り抜いてきました。建国して間もない頃確立した平和共存五原則から、改革開放の時期に掲げた平和発展の道の堅持、調和のとれた世界の建設などの主張、そして10年前新時代に入ってから習近平主席が打ち出した人類運命共同体構築の推進という重要理念に至るまで、その全てが中国の一貫した平和外交政策を具体化するものです。国際情勢がどのように変化しようとも、中国はこれまで通り、正しい道を歩み、正しい事を行い、その着実な行動によって世界平和を守り、共同発展促進に注力していきます。

 また、いわゆる「革新を図る」とは、中国の特色ある大国外交に、革新的な理論と実践を切り拓いていくことです。私たちは「天下為公(天下をもって公となす)」、「和而不同(和して同ぜず)」など中国古来の伝統文化から知恵を汲み取り、新中国の75年にわたる外交の優れた伝統を、革新的に発展させています。習近平外交思想を創出・発展させ、外交における中国ならではの特色・風格・気概を鮮明にし、元首外交戦略による外交新モデルの創出を通じて、広範囲に及ぶ、質の高いグローバル・パートナーシップのネットワークを形成することができました。また、各国との関係性を全面的に統括することで、平和的に共存し、全体的に安定した、均衡を保ちながら発展していく大国関係の枠組みの構築を推進し、質の高い「一帯一路」共同建設の推進によって、その範囲も規模も世界最大となる国際協力プラットフォームを構築することができました。

 それだけにとどまらず、中国外交は、自らの革新的発展の実現に努めると同時に、国際システムや秩序の変革にも、絶えずプラスのエネルギーを注いでいくための努力を続けています。中国は人類運命共同体の構築を提唱し、三大「イニシアティブ」、即ちグローバル発展イニシアティブ、グローバル安全保障イニシアティブ、グローバル文明イニシアティブを相次いで提起し、人類社会の共同発展、長期的安定、文明の学び合いという正しい方向を自らがリードする形で鮮明に指し示しました。また、国が強くなれば必ず覇を唱え、大国同士は必ず衝突するという古いパラダイムに対し、中国は相互尊重、公平正義、協力ウィンウィンの新型国際関係を提唱し、対抗や同盟という古い考え方から脱却し、グローバル・パートナーシップのネットワークを構築しました。さらに、国際秩序における不公正・不合理な問題に対し、中国は共に協議し・共に建設し・共に享受するというグローバル・ガバナンス観を提起し、中国が世界をリードし、ともに発展を享受する新時代を切り開いてきました。

 現在を見てみると、人類運命共同体構築の推進が、中国の対外活動の主軸になっています。人類運命共同体の構築は、習近平主席が人類社会における発展の大勢や変化の法則を深く認識した上で、世界の前途と運命という高い視点から、「どのような世界を作るのか、どのようにその世界を作るのか」という問いに対して導き出した中国なりの答えであり、各国の人々が願う美しい世界の最大公約数を結集させたものです。

 中央外事工作会議では、人類運命共同体構築の10年で得られた豊かな実践の体系的整理と、全面的総括が行われました。それはつまり、恒久平和・普遍的安全・共同繁栄・開放と包容・クリーンで美しい世界の建設をその目標に、共に協議し・共に建設し・共に享受するというグローバル・ガバナンスの推進をその道筋に、平和、発展、公平、正義、民主、自由という全人類共通の価値の実践をその指針に、相互尊重、公平正義、協力ウィンウィンという新型国際関係の構築をその支えにし、グローバル発展イニシアティブ・グローバル安全保障イニシアティブ・グローバル文明イニシアティブの実行をその戦略指針に、「一帯一路」の質の高い共同建設をその実践のプラットフォームにすることで、各国が手を携えて試練に挑み、共同繁栄を実現するよう努力し、新時代の中国外交のグランドデザインを形成したということです。

 新時代に入り、人類運命共同体の構築は、中国の提唱から国際的共通認識へと拡大し、素晴らしいビジョンから豊かな実践へと転換し、理念的主張から科学的体系へと発展を遂げました。中国はすでにラオス、カンボジア、インドネシア、マレーシア、パキスタン、キューバ、南アフリカなど数十もの国や地域と、様々な形の運命共同体を構築し、健康衛生、人と自然、インターネットや宇宙空間、海洋といった伝統及び新興分野において運命共同体の構築を展開しています。人類運命共同体構築の重要な拠り所として、中国の提唱する三大「イニシアティブ」、即ちグローバル発展イニシアティブ、グローバル安全保障イニシアティブ、グローバル文明イニシアティブは、平和を求め、発展の道を探り、協力を促進しようという各国人民の普遍的要望に、より一層応えるものとなっています。人類運命共同体構築の成功した実践である、質の高い「一帯一路」共同建設は、世界の4分の3以上の国と数十もの国際機関に積極的に支持されており、私たちは150余りの国と30余りの国際機関との間で230件以上もの「一帯一路」共同建設協力文書に調印し、3000以上の協力プロジェクトを立ち上げ、1兆ドル近い投資を牽引し、世界各国を中国の発展という「追い風」に乗せています。

 人類運命共同体構築の理念が、短い期間で国際社会、特に発展途上国の幅広い理解と支持を得られたのは、それが一国の利益や少数の国家集団の利益に奉仕するものではなく、全人類、特に多くの発展途上国の共通利益の要望に合致したからです。この理念は、中国で生まれたものですが、その大きな成果や様々なチャンスは全世界のものです。一つ一つの協力文書が調印され、インフラ事業が完成し、援助物資が世界各地へ送られてきたことが、私たちに心強さと自信を与え、人類運命共同体構築を中国外交の揺るぎない崇高な目標として推し進めていく決意となっています。中国は、人類運命共同体構築の推進を、中国の憲法と中国共産党規約に盛り込んでいます。これは、世界に対する中国の確固たる誓約なのです。私たちは、自国の前途を人類の前途と強く結びつけ、自国の発展と世界全体の発展を一体化させ、中国人民の利益を世界各国人民の利益と融合させ、絶えず自国の新たな発展を、世界の新たなチャンスへとつないでいくことで、各国と手を携えて、人類の素晴らしい未来を創造していきたいと願っています。

 未来を展望してみると、私たちは平等で秩序ある世界の多極化とウィンウィン包摂的な経済のグローバル化を提唱します。中央外事工作会議では、今後の国際情勢に対する重要な判断が下されました。それは、世界の大変革は加速が進み、世界の変化、時代の変化、歴史の変化が、これまでにない形で展開され、世界は新たな激動・変革期に入っているものの、人類の発展・進歩という大きな方向性も、世界の歴史がうねりを見せながらも前進していくという大きなロジックも、国際社会が運命を共にしているという大きな趨勢も、変わることはないというものです。このため、中国は「二大主張」を提起し、世界の平和・発展事業により多くの有利な条件を提供するとともに、人類運命共同体の構築に、より強固な基盤を打ち立てていく所存です。

 二大主張の一つ目は、平等で秩序ある世界の多極化です。世界の大変革は加速が進み、「グローバルサウス」が勢いを拡大し、世界のパワーバランスが今まさに大きく変わろうとしています。国際社会の多くのメンバーが、国の大小を問わず、世界の多極化を主張し、陣営対抗やゼロサムゲームはもちろん、戦争や衝突の轍を踏むのはもってのほかだと考えています。多極化は、すでに今日の世界における基本的趨勢となっていますが、世界が大きく変化する中で、多極化プロセスのさらなる発展をどう進めるのか、各国はそれにどのような姿勢で参加し推進していくのかについては、いまだコンセンサスを形成できていません。

 私たちは、世界の多極化は平等であるべきだと考えます。それはつまり、大国も小国も一律平等を堅持し、覇権主義や強権政治に反対し、少数の国による国際問題の独占に反対することで、国際関係の民主化を着実に推進していくということです。「弱肉強食」は、自然界のジャングルの法則であり、それをそのまま人間社会に当てはめるわけにはいきません。「実力至上主義」は、主権平等の原則に反するもので、大国が小国を虐げる口実にされてはならないのです。全ての国または国家集団が、それぞれに平等な「一極」を構成し、少数の大国が世界を牛耳ることはあってはなりません。国際事務は皆で話し合うべきものであり、世界の前途と運命は、各国がともにその手に握るべきものなのです。

 世界の多極化はまた、秩序あるべきだと考えます。即ち全体的安定を確保しながら、建設性も備えていなければなりません。多極化は、各国による団結・対話・協力の大舞台であって、分裂・対立・衝突の闘技場ではありません。もちろん、多極化には競争も伴いますが、それは良的かつ公平な競争であるべきです。例えて言えば、スポーツ大会の陸上競技のようなもので、それぞれのコースで追いつ追われつ、互いを高め合う競争であり、互いに傷だらけまで戦い、最後に立っているのは一方だけというボクシングのような競争であってはなりません。各国がともに国連憲章の趣旨と原則を遵守し、広く認められている国際関係の基本準則を堅持し、真の多国間主義を実践していく限り、多極化が世界に動揺や無秩序をもたらすことはないのです。

 二大主張の二つ目は、ウィンウィンで包摂的な経済のグローバル化です。経済のグローバル化は、社会的生産力発展の客観的必要で、科学技術の進歩における必然的な結果であり、経済の法則、各国の利益に合致するものです。冷戦終結以降、経済のグローバル化は、貿易の繁栄・投資の利便性・人の流れ・技術の発展を促進し、世界経済の急速な発展、特に新興市場国の集団的勃興を牽引してきました。しかし近年、様々な形式の保護主義が顕在化しており、国内の問題や矛盾を対外転嫁する現象が突出してきています。事実が証明している通り、これら反グローバル化の手法は、自国固有の問題を解決できないばかりか、世界の産業・サプライチェーンを攪乱し、世界経済の健全な発展を妨害し、各国の利益にまで損害をもたらしています。経済のグローバル化がもたらすチャンスと試練を前に、私たちが行うべき正しい行動は、そのチャンスを大いに活用し、協力してその試練に挑み、経済のグローバル化を正しい方向へと導いていくことです。

 経済のグローバル化はウィンウィンでなければならないと考えます。即ち、世界各国、特に発展途上国の普遍的要望に応じて、世界の資源配分による国家間や各国内部の発展における不均衡問題をうまく解決し、発展を充実かつ均衡のとれたものにすることで、世界各国、特に発展途上国の発展加速に有利なグローバル化を進めていくことです。互いの繫がりや相互依存が、これまでで最も緊密になっている今、各国は自国の発展を図りつつ、世界の発展とどうバランスをとり、ともに歩んでいくかを考えていかなければなりません。皆でともに、経済グローバル化という「パイ」を大きくし、公平に切り分けることで、異なる国や階層の人々が全て、経済・社会発展の成果を享受できるようにし、互恵・ウィンウィンと共同繁栄を実現していかなければなりません。

 経済のグローバル化はまた、包摂的なものでなければなりません。それは、各国がその国情に適した発展の道を切り拓くことを支持しながら、手を携えて全人類の共同発展を開拓していくということです。あらゆる形の一国主義、保護主義に反対し、差別的、排他的な基準やルールを阻止する必要があります。貿易や投資の自由化・利便化を促進し、世界の産業・サプライチェーンの安定化・円滑化を守り、各国が互いの正当な利益と合理的関心事項を尊重し合いながら、世界経済の健全な発展を妨げる構造的難題を解決し、世界経済の成長の活力と原動力を維持していかなければなりません。

 ここで、皆さんとともに2つの問題について考えながら、人類運命共同体の構築を主軸とする中国の外交政策に関して最近よく目にする誤解や意図的な中傷をはっきりさせたいと思います。

 一つ目の問題は、平等で秩序ある世界の多極化を提唱する中国は、現行の国際秩序を覆そうとしているのかという問題です。もちろん、答えはノーです。習近平主席が指摘している通り、「世界には、たった一つの体系しかない。それは国連を核心とする国際体系である。たった一つの規則しかない。それは国連憲章に基づく国際関係の基本準則である」と。中国は、現行の国際秩序の受益者であり、その擁護者と建設者でもあります。私たちが主張する平等で秩序ある多極化は、決して現行の国際秩序を転覆するものではなく、より公平で合理的な方向に発展させていくことです。かえって、一部の国は、口ではルールに基づく国際秩序を守ると言いながら、実際には全く逆のことをしています。例えば、国連安保理から権限を与えられていない場合、さらには安保理加盟国の明確な反対を顧みず、戦争の発動を押し切ること、これこそ、国際秩序の転覆でしょう。また、国際公約を軽んじ、「一方的離脱」を行い、国連憲章の趣旨や原則に基づく国際ルールを、自らの都合で適用したり、捨てたりすること、これこそ、国際秩序の転覆でしょう。一体この世界で、どの国が国際秩序を守り、どの国が破壊しているのか、思考力を持つ人なら、誰にでもはっきり分かるはずだと思います。

 二つ目の問題は、中国が主張するウィンウィンで包摂的な経済のグローバル化の推進は、「勝者総取り」を狙っているのかという問題です。実際には、これと全く逆なのです。改革開放以降、中国は積極的に経済のグローバル化に参加し、そこから利益を得ただけでなく、自らの発展によって恩返しをしてきました。国際金融フォーラムの報告書によれば、2023年、中国経済の世界経済成長への寄与度は32%、世界銀行のデータによれば、2013年から2021年までの世界経済成長への寄与度は平均で38.6%に達し、G7諸国の合計を上回っています。中国の成長率が1ポイント上昇するごとに、他の経済国の産出水準は平均0.3ポイント引き上げられています。今、一部の国が中国に対抗する「囲い込み」を行ったり、「リスク回避」と騒ぎ立てたりしていますが、実際には世界の発展に対する中国の貢献を妨害し、他人に損害を与えながら、自身にも何の得にもなっていないのです。

 友人の皆さん、  

 人類運命共同体の構築や、平等で秩序ある世界の多極化、そしてウィンウィンで包摂的な経済のグローバル化は一気に成し遂げられるものではなく、各国が知恵を集結させ、ともに努力していく必要があります。地域や世界の発展に重要な影響力を持つ国として、アジアひいては世界の平和・安定・発展を守るという特別な責任を担う中日両国は、手を携えて人類運命共同体構築の先駆者となるべき存在です。

 過ぎ去ったばかりの2023年、両国は中日平和友好条約締結45周年を記念し、双方の官民各界では100以上の記念行事がとり行われ、条約の精神に立ち返った平和友好の伝承という機運を大いに盛り上げ、中日関係の改善・発展のための機運とパワーを集結させることができました。両国の指導者はサンフランシスコで再び対面の会談を実現し、戦略的互恵関係の全面的推進と、新時代の要請に相応しい建設的かつ安定した中日関係の構築に取り組むことを改めて確認しました。

 錯綜する国際情勢を前に、中日関係の健全で安定した発展は双方の利益に合致するだけでなく、国際社会の普遍的な期待でもあります。中日両国は一衣帯水の隣国同士、平和・友好・協力こそが唯一の正しい選択であることは、極めて明白です。双方は時代の流れに従い、共同の責任を担い、戦略的互恵関係を推進し、中日両国の平和・友好・協力の新しい一章を綴っていくことで、人類運命共同体の構築という大きなテーマを盛り立てていくべきです。私たちがすべきことは、具体的に次の5つではないかと私は考えます。

 第一に、「互いに尊重し合う」ことです。人と人の関係においては、互いの性格や趣味、ライフスタイル、ひいては中国でいう「三観」、つまり人生観・世界観・価値観を尊重し合わなければ、友達にはなれません。国同士の交流においても互いに尊重し合うことが必要で、互いの政治体制、社会制度、イデオロギーなどを尊重し合うことは国際交流の基本準則であり、もっと言えば中日両国が国交回復当初に交わした明確な誓約です。中日関係発展の50年余りの実践が、政治的・制度的な道の異なる国同士であっても、平和共存・友好協力が十分可能であることを証明しています。一部の人々が西側の価値観に従い、イデオロギーや政治体制の異なる国にあれこれ口出しし、さらには優劣をつけるような風潮がある今、私たちはなおのこと「小異を残して大同につく」の経験や知恵を汲み取っていく必要があります。

 互いに尊重し合うには、敬隣永安で、平等な関係性を堅持し、互いに善意と誠意を示し、互いの政治体制、社会制度、価値観などの違いを認め合い、相手国が自ら選択した発展の道を尊重し、内政不干渉など国際関係の基本準則を厳守し、価値観による線引きや、イデオロギー的対立の扇動に反対していく必要があります。もちろん、家族や友人同士でも時には口喧嘩することがあるように、複雑な歴史的いざこざや、緊密な現実関係を持つ隣国同士として、矛盾や食い違いはあっても当然なことです。重要なのは、中日関係を大局的かつ長期的な視点でうまく捉え、誠意と知恵をもって、双方の間の問題や食い違いをコントロールし、解消していくことです。

 第二に、「互いに信じ合う」ことです。ここ数年の中日関係は風雨に晒され、国交正常化以来最も複雑な局面を迎えており、露見した最大の問題が、互いへの信頼の欠如であり、これは長い間、中日関係の健全な発展を妨げてきた持病のようなものです。日本の一部の人々は、中国の発展を正しく捉えることができず、それを「挑戦」さらには「脅威」であると思い込み、中国の対外政策を一面的に解釈し、中国の戦略的意図を悪い方に捉えてしまっていますが、これは、実は中国発展への過度な焦りと不必要な誤解に起因するものです。新中国が成立して75年、日本に、世界にどのような脅威をもたらしたのでしょうか。いわゆる「中国の脅威」は、そのうちのどれほどが現実となったでしょうか。歴史が証明している通り、中国は長い歴史の中で最盛期にも対外的な侵略や拡張を行ったことは一度もありませんし、これまで、そしてこれからも中国の発展が日本を含む、いずれの国の脅威にもなることはないと断言したいと思います。

 信義を重んじ、約束を守ることが、互いに信じ合うための前提です。互いに深く信じ合うには、双方がこれまでに合意してきた条約文書や政治的共通認識を厳守していく必要があります。国交正常化交渉の際、周恩来総理の「言必ず信、行必ず果(一度言った約束は守り、行なう以上は必ずやり遂げる)」との言葉に、田中角栄首相は「信を万事の本と為す」と応じました。これは中日間で長年語り継がれてきた逸話となります。平和友好条約を締結した以上、双方は恒久的平和友好の発展、内政に対する相互不干渉、すべての紛争を平和的手段により解決すること、覇権を確立しようとする他のいかなる国による試みにも共に反対すること含む一連の核心原則を厳守すべきです。中日の戦略的互恵関係の位置づけを確認した以上、「中日は互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」という政治的共通認識を、その政策で体現し、実行に移すべきです。

 第三に、「互いに知り合う」ことです。総領事を務めて2年余り、私が最も痛感したことの一つは、中日関係の改善・発展には、正しい相互認識の確立は基本中の基本だということです。誤った認識でいると、双方の関係は必ず焦点を失い、安定性を欠き、バランスを崩します。ここ数年、中日間の国民同士の感情が思わしくなく、特に日本国民の対中感情が低迷しています。その根本的原因が、正確で全面的かつ客観的な相互認識の欠如にあります。業務エリアの各界の方々との交流の中で、私は多くの日本の皆さんの対中認識に誤った部分があり、特に新時代の中国への理解が著しく不足しており、中国へのイメージは今も十数年、さらには数十年前のまま、更新されていないことに気づきました。また、日本の方が二つの関係、即ち古代中国と現代中国との関係及び14億の中国人民と9800万を超える党員を有する中国共産党との関係を正確に理解されていないことに憂慮しております。本来一体化となるそれぞれの両者を引き裂いて対立させたり、むやみに排斥・取捨選択したりすると、正しい中国像が見えてこないでしょう。過去の認識で今の中国を見て、一方的な視点から中国全体を見ると、リアルで客観的な結論を導き出すことはできないでしょう。

互いをよく知るための最も直接的で効果的な方法は、互いに頻繁に行き来し合うことです。例えば、多くの日本の方が中国と聞くとすぐに、スモッグに覆われた空や、ゴミで散らかった街を思い浮かべます。しかし、中国へ行ったことのある人は分かると思いますが、中国の生態環境はとうの昔に大きな変化を遂げているのです。つい最近、訪中から戻られた日中経済協会の進藤孝生会長は、7年ぶりの訪中で、空は青く、街はとてもきれいになっていたと感心されていました。他の例を挙げると、春節期間中に日本の皆さんを上海古寺巡りにご案内するツアーがあったのですが、参加者の方が旅の感想の中で言われたように、「聞いて地獄、見て天国」の一言が、大変印象的でした。これらは、日本の皆さんが新時代の中国の発展や変化を、その目で見て、身をもって体験する機会さえあれば、必ず客観的で理性的かつ積極的な対中認識が確立されることを十分に示す例です。コロナの暗雲も過ぎ去り、中国総領事館は「Look at China」「Go to China」をスローガンに、よりバラエティ豊かな交流活動を展開していきます。特に、より多くの日本人の皆さんに中国を訪れてもらいたいです。皆さんがご自身の影響力を発揮し、ご家族やご友人を巻き込みながら、ともに両国民が互いに知り合い、仲良くなるよう努力してくださることを期待しています。 

 マスコミは、相互認識を構築する上で大きな役割を果たしています。双方の国民が直接交流できるチャネルが乏しい場合、テレビ・新聞・インターネット等が、互いを理解するための主要チャネルになります。残念なことに、日本メディアは中国に関するネガティブな報道で満ち溢れており、一部を切り取って中国を悪意的に解読したり、さらには某国による捏造に便乗し、虚偽の情報を拡散したりしています。その結果、日本国民の対中認識をミスリードし、日本国民の対中感情を悪化させ、それがまた日本政府の対中政策にマイナスな影響を与え、最終的には中日関係を悪循環に陥れてしまっている状況です。メディア関係の友人に聞いた話では、ネガティブなニュースこそ注目度が高く、中国関連のネガティブなニュースをたくさん報道した方が、新聞雑誌などが売れ、テレビ番組の視聴率が上がるのだそうです。これは率直に言えば、かなり無責任で近視眼的なやり方です。ジャーナリズムとはほど遠いものと言えます。悪意をもって中国に関する虚偽の情報を拡散、さらにはでっち上げることは、ニュース報道の原則やメディアの社会責任に大きく反し、長期的にはメディアの信頼性にとっても致命的打撃となり、メディアの健全な発展には不利です。ここで、メディアの皆さんにお願いがあります。皆さんが中国にカメラを向ける時、どうか「灰色がかったフィルター」を使わず、「ビューティーカム」も不要で、リアルで客観的かつ全面的な報道でありさえすれば、報道は自然と豊かで素晴らしいものとなり、日本国民に支持され、事実や歴史の検証に耐えうるものとなることです。

 第四に、「互いに利益を与え合う」ことです。互恵・ウィンウィンは中日協力の主旋律です。中国の改革開放から45年、日本は官民を挙げて、資金や技術協力、企業への直接投資などの形で改革開放に参加し、支援してきました。中国に設立された日本企業は3万社を超え、対中投資プロジェクト数は累計5万件以上を超え、直接投資の累計は1300億ドルに達し、中国の現代化建設に貴重な支援を与えただけでなく、日本自身にも発展のチャンスをもたらしてきました。今は、いくつかの消極的な要素に直面しているものの、私たちが積極的かつ理性的に、そして前向きに考えていけば、中日協力の基盤は依然強固であり、発展のポテンシャルも依然大きく、未来への展望は依然明るいことに自然と気がつくはずです。しかし、近視眼的なゼロサム的な競争原理から抜け出せなければ、行動が守勢にまわってしまい、結果として他人の道を塞ぐと同時に、自分自身を捕らえる壁を作ることになります。中国は常に、日本を重要な協力パートナーとみなし、日本企業には対中協力において更なる成功を収めてほしいと願っています。日本が中国の質の高い発展やハイレベルの対外開放がもたらす新たなチャンスをつかみ取り、自身の新たな発展を実現することを歓迎します。

 また、中日両国は経済のグローバル化の受益者、貢献者として、世界経済の発展法則に従い、ともに自由貿易やルールに基づく多国間貿易体制を守り、「デカップリング」に反対し、「囲い込み」を阻止し、いわゆる「経済安全保障」を理由にした人為的制限を設けず、開放的かつ実務的な態度で、協力の深さ・広さ・質を高め、さらなる互恵・ウィンウィンを実現していくことを期待します。

 第五に、「互いに学び合う」ことです。これまでにも、このような場面で何度も触れてきましたが、国交正常化以降の中日関係の発展は、かなり偏ったものになっています。物的面での交流は密接ですが、精神面での交流はかなり乏しく、遅れています。両国の文化は同じルーツを持ち、人文交流は千年も続いており、「和を以て貴しとなす」「和して同ぜず」「小異を残して大同につく」など共通の価値と理念を持ち、東アジア文明の内実や境地を豊かに向上させてきました。この優位性が、今や十分に注目・活用されていないのです。

 仏教、美術、漢字、盆栽、映画など、様々な形の文化交流を展開していく中で、私はこれら共通の文化的価値観が、両国民の心の奥底にある共感を呼び起こし、互いの心の距離を近づける天然の紐帯になることに気づきました。私たちは大いに文化交流を展開し、まだ広くは知られていない両国の間にある「眠った資産」を掘り起こし、目覚めさせ、活性化させ、うまく活用することで、それらに新たな時代的価値を吹き込み、両国民の心の距離を縮めることで、「物心両面とも豊かな」中日関係の構築を後押ししていかなければなりません。

 友人の皆さん、

 すべての正しい道は、常に時勢とともにあります。人類運命共同体の構築という素晴らしい物語が今まさに展開中で、中国外交が人類の平和・発展事業を推進する決意は、ますますその輝きを増しています。たとえ乱気流が吹き荒れようとも、人類の発展・進歩という大きな方向も、世界の歴史はうねりを見せながらも前進していくという大きなロジックも、国際社会が運命を共にしているという大きな趨勢も変わることはない、私たちはそう固く信じています。日本側とともに努力し、きちんと向き合いながら、絶えず中日関係の新たな未来を開拓し、手を携えて人類運命共同体を構築していくことで、人類社会により美しい未来を切り拓いていけることを期待しています。

ありがとうございました。


 
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